[一言]:”ファインダー撮影”の方法を教えていたら、「撮るのが早い」と言われた話
- ”良い写真を撮影するために心がけていること”
- カメラを構えて撮影するのは一連のルーティンになっている
- 経験上、素早く撮影した方が良い場合が多い
- 今この瞬間、と思ったシーンを壊すのは私自身の撮影そのものなのだ
- 特にスナップ撮影には、素早い撮影が可能な機材が適している
写真教室の話
先日、緊急時代宣言の合間を見て、久しぶりに少人数の写真教室を開催した.従来より人数を大幅に減らし、ソーシャルディスタンスの確保、健康状態の管理、機材の消毒など十分な感染防止策の上で行った.対象は、初心者から初級者で初めてのレンズ交換から始まり、視覚と写真の違いを考えるというアプローチで、写真的な表現を学ぶ.座学と実技で構成されるおよそ4時間にわたる講座である.
撮影の方法と教材
内容としては、やや古典的な内容でとなっている.カメラはデジタル一眼レフを使う.基本設定は、中央1点AF、Pモード、レンズは標準ズームと50mmの単焦点レンズ.教材に関してはここ数年、色々悩んでいるのも事実だが、最新のミラーレスを使うとAE / AFなどカメラ本来の動きが理解しにくくなる(と思っている)ので、今年もデジタル一眼レフを使うことにした.おおよそ、半分くらいの生徒さんはファインダーを覗いた事が無いので、カメラの構え方とかファインダー撮影の方法とかからレッスンすることになる.
ファインダーを使った写真撮影のルーティン(George NAKA流)
スタンバイ状態:
- カメラは電源を入れてレンズキャップを外した状態で、肩や首に下げておく
- 前提条件として、自分が使っているレンズの画角を大まかに把握していること
- 最も気に入っている自動露出計(P, Av, Tvその他)設定をデフォルトのモードとする
- ISOもオート、シャッター速度の下限値を1/125程度に設定しておく
被写体を探しながら・・・
- 興味がある被写体を見つけたら、距離と画角を考慮して移動する
- カメラに手をかけタイミングをはかる
撮影(パターンA):
- 被写体を見たままカメラを構えて、視線に割り込ませるようにファインダーを差し入れる
- フォーカス・ロック(レリーズボタン半押しなど)
- フレーミング
- レリーズ(レシーズボタン全押しなど)
- カメラを戻す
- (必要に応じて許可を頂く)
撮影 1 ~ 5. は3秒以内、出来れば2秒以内にできるようにする
撮影(パターンB):
- 被写体とアイコンタクトをして、撮影の許可を得る
- 「写真撮らせて頂けますか?」的なセリフ(旅先の言葉で言えるようになっておくと良い)
- ”あなた”に相当するジェスチャーと、自分のカメラを指さし、「OK?」を確認する動作
- 撮影自体はAと同じ
- お礼を言う(場合によっては撮影した写真を見せる)
「撮影(パターンB)」は主被写体が人物で、事前に撮影の許可を頂く場合、「撮影(パターンA)」はそうでない場合となる.事前のコミュニケーションはゆっくりと穏やかに行った方が良いので、撮影時間には含めない.”撮影する”となったらスピード勝負である.
このような内容の説明をしながら、撮影のデモをしていたら「いまの(動作)で撮ってるんですか?」と言われたわけだ.(撮影ルーティンの動きだけをしていると思ったらしい)
写真撮影の心得
シーンの保存性とカメラを向けられるストレス
一般論として、被写体がプロのモデル、またはそれに準ずる方でない限り、人は長時間カメラを向けられている事にストレスを感じてくる.直接向けられている時はもちろんのこと、たとえ視界の隅であっても、こちらへ長時間カメラを向けている人がいると認識すると、何となく徐々にストレスを感じてくる.つまり重要なのは、距離や向きではなく時間である.そして、経験上、それは最長3秒位だと考えている.旅先などで良い雰囲気の人やシーンを見つけて、折角、撮影の許可をもらえても、時間をかけすぎれば、最初に感じた”良い雰囲気”はどんどん失われてしまうことが多い.
大前提として写真撮影をしても問題ない場所で撮影しているとして、街中でスナップを撮影する際に(現在では色々な意味で難しくなってきているが)短い時間で撮影を終わらせることで、自分が見たシーンを壊すことなく撮ることができる.動く物・人の位置とかはもちろんのこと、そのシーン独特の要素や、その場が醸し出している雰囲気などを写し取りたい場合には重要な部分だ.時間をかけすぎれば、自分自身が「写真を撮ってる人がいる」という違和感の元凶となり結果としてそのシーンを壊してしまう.「撮りたい」と真に思ったシーンを残すためには、あらゆる意味でスピードが勝負なのだ.
写真を撮られる事に”テレ”を感じる人もいるかもしれない.みんなで集まって記念写真、というならともかくとして、いざ一対一で写真を撮るとなると何となくテレてしまう人は少なくない.カメラを向けた時に、写真用のポーズを決めて「ぃえーい」などと声を出すのは実はテレ隠しという側面もある.「”ふつう”の状態を撮らせて欲しい」とかいうといよいよ困る.自分の”ふつう”ほどテレくさい物はない.いったんテレてしまったら「テレないで下さい」とか言ってももちろん無駄で、ますますテレる一方だ.どうするか?”テレがでる前”に撮影を終わらせてしまうのがいちばんである.
たしかに風景写真や、景観写真、動物や乗り物など、じっくりと時間をかけて撮影するジャンルの写真もある.しかし、時間をかけているのは撮りたい瞬間、撮影の前提条件が揃うまでの話で、実際に撮影するタイミングは常に最良の一瞬である.
作例を見てみよう
コロナ前、最後に出掛けた海外取材時のプライベートスナップを例に見てみよう.

観光地で見かけた仲の良さそうな旅行者(たぶん)の親子(多分)がベンチで休憩されているところを撮らせて頂いた.右側の娘さん(たぶん)は最初の雰囲気のまま写真用の表情に移行してきている、左のお母さん(たぶん)も十分に素敵な笑顔だが、じつは表情がややが硬くなるギリギリの瞬間と言ったところ.この後数秒で、外向けの笑顔を作ったお母さんと娘さんの記念写真になってしまう.

信じられないことに、彼は観光バスの運転手で、このレンブラントライティングはバスの停車場所と、その時間帯と、彼がわずかにこちらを向いた瞬間に起こった全く偶然の産物である.この日はバスツアーに参加していてバス戻ったときにステップから運転手さんを見上げて「あ、すごく良い」と思い、カメラを見せて、”アナタ”を表現して、彼が頷いて、撮影・・・、撮りたいと思ってから、撮影の終了までおそらく3秒くらい、その後、写真を一瞬みせてお礼を言ってバスに乗った.結果的には彼はかなりキマった表情だったので、仕事がら写真を撮られることも多いのだと思われる雰囲気だったが、色々な偶然が重なった瞬間の私自身の思い出に残る一枚である.

有名な観光地で早朝に裏路地を歩いていたときに見かけた地元の方.さりげなさの中にかなり雰囲気があり、先に声は掛けず、通り過ぎた後ろ姿を撮らせて頂いた.先に声をかけてしまうと”さりげなさ”の雰囲気は全くなくなってしまうと考えたからだ.また、通り過ぎるシーンは瞬間的な反応が必要となるため意外と難しい.スナップは基本的にトリミングなしで、リタッチも最低限にしている.この写真も少し構図が傾いているが、一瞬の切り取りという意味も含めて、あえてそのままにしている.

歴史博物館的な施設の中で、古い建物の先に見える青空が気になって撮影をした一枚.中段におみやげ屋さんがあるため、奥から手前の階段にかけて人通りがおおく、途切れた一瞬を狙って撮影.さりげなく待っていないと、私の写真撮影のために立ち止まらせてしまったり、にこやかに手を振ってくれる人が現れしまうので、とにかく撮影タイミングを待っていると臭わさずに、撮影は一瞬で終わらすことで目的のシーンを撮影できた.

写り込む人々によって雰囲気が大きく変わる.道幅イッパイに広がって歩く彼ら家族は、自信に満ちあふれ、やや古いこの街並みにゴージャス感を与えていた.ここは、有名な観光地の狭間にある発展途中(観光的に)の街らしいが、まだ(観光地として)垢抜けない街の景色が彼らのいる場所だけきらびやかに見えたのが面白くて何となく撮影.

最後にこれは失敗例.雰囲気のある人がいたので声をかけて写真を撮らせてもらおうとしたら、大道芸(?)の人だったらしく空中でコマを回し始めてしまった.芸をしている彼の表情とかは気に入っているのだが(まあ、ある意味プロだが)、見直すと肝心な(彼的には)コマは写ってないし、向こう側の女性が”何事?”とこっちを見ている.撮影は一瞬で終わっていたが、彼のパフォーマンスをしばらく見てお礼を言ってその場を後にする事なった.(この場所でチップを受け取るようなパフォーマンスは禁止されているらしい)
スナップ撮影の機材
その昔、スナップカメラといえばレンジファインダーカメラだったらしい.小型軽量で軽快な操作性、それに威圧感のなさが重要だったという.私はフィルムで撮影していた時代から、スナップも一眼レフで撮影していた事もあり、早い撮影スタイルが身についたのかもしれないと思っている.もしかすると、やや大柄で長髪な事もあり、コッソリさりげなく撮影するスタイルが難しいのかもしれない.ちなみに、上の作例はすべてEOS 5D Mark IVと50mm単焦点レンズで撮影している.
この頃までは(2018年)、スナップカメラはEOS 6Dか、EOS 5D Mark IVを使っていたが、EOS Rを使い始めてから少し戸惑ったことがあったので最後に付け加えておこう.EOS RのAFは十分な速度があるはずだが、このような撮影方法だと一瞬ラグを感じる.これはR5を使ってもまだ同じような感覚が残るので、今のミラーレスカメラ全般に言えることのようだ.おそらく撮影可能になるまでの時間はほとんど変わらなそうなのだが、スリープ状態からEVFが復帰するまでの一瞬が気になっているのかと思う.私の撮影領域では、多くの場合でもうミラレース1本で撮影できると頭では考えているのだが、実際にはまだまだデジタル一眼レフを必要とするシーンが身の回りにもあるのかもしれない.
写真は2秒で撮る
カメラを向けられて撮影されるということは一種のストレスである.被写体である人がそれを意識的に解決する、あるいは転換してうまく自分にフィードバックするという事は、一般的には難しいテクニックだ.だから、人物撮影には事前に十分な時間をかけた上で,撮影自体は一瞬で終わらせる方が良い結果が得られることが多い.
自分が何かを感じたシーンも移り変わる中の一瞬であることが多く、そこを抑えられるかどうかもスピード勝負である.まず、カメラを出しおくこと、レンズキャップを外しておくこと、電源を入れておくこと.
良い写真を撮るためには、「その時にカメラを持っていないといけない」という大原則がある.その上で「速く撮れなければ」それをおさえることができないのだ.私の感覚的な”速く”のイメージはおおよそ2秒以内だ.


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