[結論]:SONYは確かに大きく一歩を踏み出したと言える(シェアは10% – 15%の間くらいだと思われる)
- いくつかの情報を整理すると、SONYのシェアは、多くて15%前後と予想される
- それでも2016年のリオデジャネイロオリンピックではほぼ0に近い数値だったはずだから、大躍進であることは間違いない
- 公式情報を出しているのはCanonのみである(おそらく)
- 東京オリンピックで使用されたカメラのシェアを前回から比較すると、Canonはほぼ横ばい、Nikonがシェアを落とし、約1/3程度をSONYに奪われた.というように予想する
- 世の中では15%という数値に物足りなさを感じ、SONYのシェアを多めに出したい傾向があるのではないか?と感じる事がある

「ソニーの報道カメラ、五輪・パラで躍進 2強に風穴」nikkeiの記事が目に付いた
これまでもオリンピックのたびに、CanonとNikonのカメラシェア争いが報じられてきており、毎回風物詩として楽しんでいた.おそらくリオデジャネイロオリンピックまでのここ20年ほどは、CanonとNikonのオリンピックにおける報道用カメラシェアはほぼ互角で(双方が勝利宣言した年もあったと思う)、しのぎを削りながらも安定していた.写真にたずさわる者ならば、今回のオリンピックでは”α9, α9 IIをひっさげてSONYがどこまで食い込むか?”ということにも興味があったのは当然だ.そしてそれはすでに、1ヶ月ほど前の話題だったと思う.
そんな中、日本経済新聞のWeb版で「ソニーの報道カメラ、五輪・パラで躍進 2強に風穴」という記事が目に付いた.この日経Webでは無料会員に登録すると一月に一定数(5本~10本程度)の有料記事を読むことができるのでこんな時に重宝している.中身はタイトルからは少し外した内容で骨子は次の通り
- 映像を用いたVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が国内外で広がっており、ソニーが2011年に買収したホークアイ・イノベーションズは、その仕組みを運営する英国企業である
- ホークアイは、競技によって異なるが、1秒で100枚程度撮影できるような高性能カメラを10台前後設置し、会場内で映像やCG合成を行っている
- 関係者からは「現場では2~3割のカメラがソニーだった」という声が多く聞かれた、特に目立ったのはゴールボールなど、音を頼りにするパラリンピックの競技だ
さて、これは何を伝えたく何を意味する記事なのだろうか?私は全く理解できなかった.
SONY α9が切り開いた世界
SONY α9(およびα9 II)は非常に優れたカメラだ.私も興味があってしばらくお借りして撮影をしたことがある.私はその後しばらく、舞台や発表会、スポーツ撮影の時に、自分のカメラがいかに大きな音を立てているのかを思い知り、若干のスランプに陥った.知人のαユーザーのカメラマンによると、テニスやゴルフではその競技の性質上、圧倒的な勢いでシェアをのばしていたそうだし、一度、サイレントシャッターを知ってしまうと主催者側も「可能ならばサイレントで」とカメラマンを機材でより分けるようになってきたと.当然、CanonユーザーもNikonユーザーもこっそりとα9を一台(CanonユーザーならもれなくMC-11と共に)忍ばせていたと聞く.そう、シャッター音は「仕方ない物」と思われ”大目に見られていた”時代から、異なる世界になったのだった.
オリンピックのカメラシェア
プロスポーツ世界に進出したSONY α9シリーズ.さらに昨年、AP通信との独占契約をして話題になったりと、オリンピックでの活躍が期待されてるのも当然である.オリンピックをテレビで見た限り”チラホラ”SONYを見かけるので「やはり出てきたか」と感じたモノの、ほとんどがCanon / Nikonのカメラに見えたので、”やはりトッププロはコンサバだな”とも思った.
「東京オリンピック カメラシェア」で検索すると7月末〜8月にかけて様々な記事を見つけることができる.その中で注目した記事は以下の2本だ
- Canon claims top share of press cameras used at the Olympic Games Tokyo 2020, highlights DSLR and mirrorless cameras and remote image capture technologies that assisted press photographe
- 東京2020オリンピックプロカメラマンはキヤノン59.7%、ニコン31.2%、ソニー9.1%(352人を対象調査)
前者は、Canonが全世界に発信した、東京オリンピクでの”公式トップシェア宣言”で、独自調査によりプロフォトグラファーに使用されたキヤノンの報道用カメラの使用率は約55%であったとしている.検索では、この内容を引用したトピックスも多く見つかった.後者は、様々なカメラ・写真の情報提供をされている“Amazing Graph”さんの記事で、カメラマン席が撮された画像・映像から、〜独自調査でのべ352人の使用カメラを調べた〜、となっている.残念ながら、これら以外に”調査をした結果”を元にした情報はない.前出の、日本経済新聞の記事も同様だ.
もちろん、独自調査には限界やモレがあるのは当然だし、〜特に目立ったのはゴールボールなど、音を頼りにするパラリンピックの競技だ〜、にあるように特定の競技によっては極端なシェアがあったと言うことも否定できない.
東京オリンピック・パラリンピックでSONYのカメラシェアは躍進があった
シェアは前回のオリンピックからすれば、1%未満から→15%以下程度への大躍進だ.数字のインパクトからすると小さく見えるかもしれないが,失敗が許されないプロが、4年に一度の世界的イベントにチョイスする機材としては十分すぎるくらいの躍進だと思う.そう、”数字のインパクトからすると小さく見えるかもしれないが”というところが今回のキモなんだ.その結果、現場を知っていればもの凄くインパクトのある大躍進なはずなのだが、”雰囲気的に”15%ではちょっと物足りない、と感じる世の中の多くに向けて、”大躍進感”を出すためにちょっと盛った数値を”感想”として出すのだと思われる.
客観的に見て、公式見解のCanon: 約55%は大きくぶれそうもない(せいぜい±5%).その上でNikonとSONYのどちらが多かったか?と考えれば、SONY > Nikonであったとは考えにくい.すると、ちょくちょく散見する「SONYが30%近くあった」という印象は到底事実を反映しているとは考えにくい.そもそも、SONY > Nikonであるならば、SONYが公式見解を出さない訳がない.Nikonが公式見解を出さないのは、明らかに前回からシェアを落としているためだとすれば理解できる.
今回の東京オリンピックで使用されたカメラのシェアを前回から比較すると、Canonはほぼ横ばい、Nikonがシェアを落とし、約1/3程度をSONYに奪われた.というような結果であっただろうと予想する.
ちなみに、1964年の東京オリンピックでは、ほぼ100%がNikonのカメラだったと言われている.では、今後、SONY一強の時代が来るのか?と言われれば、それもちょっと考えにくい.実はすでにα9で先行したSONYのアドバンテージは徐々に少なくなってきている.SONYは今後、最先端の技術だけでなく、1964年から使い続けられてきたプロの道具、40年以上をかけてトップシェアとなった技術や信頼性とも戦い続けなくてはならないのだ.


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