焦点距離50mmの標準レンズを、自分のスタンダードレンズとする

[一言]:50mm, F5.6, 1/125あたりが私の写真のど真ん中だと思ってるのだ

  • 構図や使い方によっては、幅広い表現方法として使える万能レンズ
  • 私にとって50mmレンズはホームグラウンド的、ジョギング的、準備運動的な写真撮影
  • 一本しかレンズが使えないのなら、迷うことなく50mmレンズを持ち出す
  • 良い写真を撮影するために心がけている事の一つは、構図とパースペクティブ
  • スタンダードレンズは、構図とパースペクティブのスタンダードを身につける助けになる

スタンダートレンズ(標準レンズ)

カメラ・写真の世界では、35mmフィルム(135フィルム)およびフルサイズデジタルカメラのセンサーサイズに対して、焦点距離50mm(あるいはその付近)のレンズを”標準レンズ”と呼んでいる.”標準”に関しては様々な説があるようだが、私は「視覚に近い視野およびパースペクティブ」である説を支持している.また50mm(35mm換算)の焦点域を含むズームレンズは標準ズームと呼ばれ、レンズ交換式カメラのキットレンズになっている場合が多い.

個人的な標準レンズの意味や、中心としている焦点距離の選択にはそれぞれの考えがあると思う.少々言葉遊びになるが、自分が中心と考えている焦点距離のレンズをスタンダートレンズ(基準レンズ)と呼ぶことにする(英語だと標準レンズ = Standard Lensなので、この言葉遊びは成り立たない).

私のスタンダードレンズは50mmレンズである.過去には35mm, 40mmパンケーキなど色々浮気もした.私が50mmレンズを持ち出すのは、旅先のスナップや特に何も撮影に関して考えがないときだ.前者は万能レンズとして、後者はジョギング的なトレーニングや軽い訓練目的だ.訓練と呼ぶとかなり大げさだ.硬くいうと画角とパースペクティブをカラダにしみこませるための反復練習なのだが、何より50mmレンズが描き出す風景と自由度が好きなのだ.単焦点レンズで自由度?何を言ってる、って思うかもしれないが、私は、50mmレンズ一本で写真を撮っているときに大きな開放感を味わっている.似ているのはアレだ.公共交通機関でリラックスできる状況で少し長い時間を移動しているときの、少し不自由なユルイ拘束感.そして、画角とパースか限定されると、目の前の風景を無意識に近い状態で50mmの画角にフレーム分割している.そして気に入った”ソレ”にはカメラを向けて一枚ずつ切り取っていくのだ.

焦点距離と画角、パースペクティブと遠近感

レンズの焦点距離は「画角」と「パースペクティブ」を決定する.画角は構図(フレーミング)の基準となり写る範囲を決定するように思われるが、被写体距離によって撮影範囲は変わるので、レンズの焦点距離が制御する主体はむしろ「パースペクティブ」である.

パースペクティブは投影遠近法、すなわち幾何学的に遠近感を表現する手法のことだが、写真撮影の場合、幾何学的構図の遠近感その物の意味で使っている場合が多い.平たく置き換えて言えば、近いものが大きく、より遠いものが小さく見えるという事だ.パースペクティブの違いは、それらの大きく(小さく)みえる度合いの違いとなる.広角レンズや望遠レンズは、視覚的と大きく異なるパースペクティブにより遠近感の誇張(遠くのものがより小さく見える)や圧縮(遠くのものがあまり小さく見えない)を作り出し、独特な写真的表現を実現する.逆に言うと実視覚に近いパースペクティブをもつ標準レンズでは、このような単純な写真的表現は使うことはできないので、ある意味難しいレンズとも言えるかもしれない.

余談だが、遠近感にはその他に両目の視差によるものや経験的な感覚などがある.経験的というのは、例えば人間やクルマ、建物の1階あたりの高さなど、自分が把握している物体の大きさの見え具合から、デフォルトの(視覚本来の)パースペクティブ元に物体距離を想定するもので、片眼で見ている場合でも経験的に知っている物体が視界にあれば距離感を認識できる.両目の視差による遠近感は、もちろんVRなどで活用されている

また、写真的、絵画的な表現手法としては、デフォーカス表現や空気遠近法などがある.視覚では、意識を向けた物体にフォーカスが合ってしまうので、デフォーカスによる遠近感を感じるのは難しい.空気中の水蒸気やチリによって遠方の形式が霞んで見える状況では、影響の大小によって視覚的にも遠近感を得られる.50mmレンズはF1.8など開放F値が明るいレンズが手頃に手に入る.そのため、デフォーカス表現(ボケ)などは使いやすい.

スタンダードレンズ(50mm)の作例

以下の作例はすべてフルサイズカメラと焦点距離50mmのレンズを使って撮影している.手前味噌だが、被写体や構図などにより同一焦点距離のレンズで撮影したとは思えないバリエーションを感じられるのではないだろうか.

スナップショット

旅行などでカメラを持ち歩いている場合の私の基本設定は、Av mode, F5.6, ISOオート(シャッタースピード下限1/125)あたり.AFはセンター1点.AFに関してはミラーレスに移行してからはいくつかの設定を試したが、スナップショットに関しては、私はやっぱりセンター1点がしっくりくる.モードはワンショット.センターで主被写体を拾って(フォーカスロック)カメラを振って構図を決めてレリーズ.カメラの目になっているときには、目の前の風景が勝手にフレーム分割されているので、気に入ったものを、そのままのイメージで写真に収める.後日、眺めたときに撮影した瞬間の雰囲気を(その周囲の記録されなかったフレームを含めて)思い出す事ができる.

気に入った構図があると、組み写真のように繰り返したりする.

私にとって50mmレンズの真骨頂は、ちょっと速射っぽいスナップショットだ[写真は3秒で撮る、できれば2秒で撮れ].動きのあるシーンをフレームに切り取る場合、画角と距離感と撮影タイミングが連動するカメラの目”勝手にフレーム分割”は役に立つテクニックだ.

50mmレンズは開放F1.8など明るいレンズが手頃に手に入る.近年のカメラは高感度性能が良いので、夜景や雰囲気重視のかなり暗い場面でも、あまり考えずにそのまま撮影できる.(暗いシーンでは最初っから露出補正をマイナスに振っている)

広角レンズっぽい使い方

50mm本来の画角は主体をはっきりさせる構図に向いていると思うのだが、中央付近に明示的な主題を置かず、ややアオリ気味に使うことで広角レンズっぽい写真になる.

望遠レンズっぽい使い方

やや遠めにおいた主被写体をパースが目立たないような構図で撮影すると望遠レンズっぽい描写となる.後ろボケを組みあわせると、不思議と遠景圧縮感が感じられる.

マクロっぽい使い方

主要な50mmレンズの撮影倍率は決して高くないが、寄りで撮影するとマクロっぽい写真も撮れる.EF50mm F1.8 STMでは、それまでの50mmレンズの最短撮影距離(=0.45m)から0.35mに短縮されたが、RF50mm F1.8 STMでは、さらに0.3mまで短くなったため、撮影倍率も0.25倍となりよりマクロっぽい撮影が可能だ.

ポートレイトレンズとして使う

通常のポートレイト撮影には、85mm, 135mm, 200mmなど、望遠側のレンズを使うことが多い.これらのレンズはゆがみが少なく、また背景処理を単純化して人物をより引き立たせることができるのが良い.逆に50mmレンズを使うと人物周辺のシテュエーションをある程度入れ込むことができる.特定の状況や、明確な世界観があるスタジオや場所での撮影では50mmを使う.スナップショットの延長でポートレイトを撮る場合もある.

物撮り

物撮りにも使える.通常メインのレンズとしては標準ズームレンズの望遠側か、100mm Macroあたりを使うことが多いが、十分なディスタンスが撮れないときや自然な遠近感が欲しい場合は50mmまたはその付近の焦点域を使う.ただし、パースのゆがみに注意する必要がある.

焦点距離50mmの標準レンズを、自分のスタンダードレンズとする

私が良い写真を撮影するために心がけている事の一つは、構図とパースペクティブだ.構図として主被写体の写る範囲は、撮画距離を変えることである程度コントロールできるが、パースペクティブはレンズ焦点距離により決まってしまう.

50mmレンズは構図や使い方によって、幅広い表現が可能な万能レンズだ.一方で、視覚に近いパースペクティブは極端な写真的な表現を使えないため、難しく感じることもあるかもしれない.そんな意味で私にとって50mmレンズはホームグラウンド的、トレーニング的、準備運動的な写真撮影を行うための機材であり、さらに、一本しかレンズが使えないのなら、迷うことなく50mmレンズを持ち出すと言えるほど、このレンズが描き出す風景と自由度が好きなのだ.

Canonには手頃な3本の50mmレンズがラインナップされている.EF50mm F1.4 USMは昔から使っている好みのレンズだがさすがに設計が古い.最短撮影距離0.45mというのがやや使いにくい.古めの柔らかい描写は被写体を選ぶが、DLOを使うことで比較的スッキリした画作りもできる.EF50mm F1.8 STMは最短撮影距離が0.35mと使いやすく、描写もスッキリとした現代的な画作り.RシリーズならRF50mm F1.8 STM1択.最短撮影距離も0.3mまで短縮されている.

私のスマートフォンiPhone XRのメインカメラの焦点距離は26mm(35mm換算)だ.多くのスマートフォンのカメラは20mm – 30mm相当の焦点距離を持っており、頻繁に使っていると自然にこの広角寄りの距離感や画角になれてくる.普段から慣れているスマホの目である26mmを自分のスタンダードレンズと考えることも決して悪くはないが、その選択は望遠寄りの感覚を身につける時に苦労するかもしれない.

レンズ交換式カメラを使うメリットは、もちろん様々な(焦点距離の)レンズを使うことができる事だ.例えば望遠レンズは遠くのものを大きく撮影する事が可能だが、画作りで重要なのは拡大率ではなくパースペクティブだ.自分の画作りに必要となるレンズを正しく選択するためには、自分のスタンダードレンズを作ることが重要だと考えている.もし特定のこだわりがないのなら50mmレンズをスタンダード候補として試してみることをお勧めする.標準ズームに必ず含まれる50mmという焦点距離を単焦点レンズとして持ち歩くことに意義を感じることができたなら、写真やカメラ機材に対して何かしらのステップアップができていることを期待する.

長くなったが、このような意味を持って、私にとって「焦点距離50mmの標準レンズは、自分のスタンダードレンズ」なのである.



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