PowerShotの新しいジャンルVシリーズの初号機V10は、PowerShotのカテゴリながらミラーレス1眼なみの機能向上ファームウエアアップデートが行われる優遇されているカメラだった
ミラーレス時代のカメラ
デジタル一眼レフカメラからミラーレスカメラにシフトして以来、撮影機能を始めとした様々な変化が訪れたが、ファームウエアアップデート(以降、ファームアップ)によるカメラの機能向上も大きな特色の一つだ.
以前、“ミラーレスカメラ時代の新常識:ファームアップによる機能向上@EOS R”において、「これからのカメラは発売初期のスペックだけではなく、数年間提供される新しいファームウエアにより、時間が経過するにつれて別物に近い進化をする場合がある”」と書いた.
それは、価格が高騰化するミラーレスカメラが、ある程度時間がたっても陳腐化しないという保険的な意味で、購入を後押しする一つの理由付けにもなっていると思う.事実、私のミラーレスカメラ2代目にあたるEOS R5は、すでに2020年の発売から4年目となってもファームアップが提供されている.もちろん、後発の最新カメラと全く同等の機能とはいかないが、ファームアップのたびに、少しまた新しい気持ちでカメラに向かい合うことができるのは、精神的・感覚的にとても良い.
一方、比較的低価格のコンパクトカメラでは、以前も現在も基本的には不具合修正以上のファームアップは提供されてこなかった.たとえばCanonではPowerShot G7シリーズなど、コンパクトカメラとしては比較的高額な現存モデルにおいても、機能向上ファームアップは提供されていない.
SonyのZVシリーズやDSC-RXシリーズなどのコンパクトカメラでもファームアップは提供されているが、ほとんどは不具合修正や安定性向上を主目的としている.もちろん、パフォーマンス向上や、通信機能などに関しては新機能の提供も行われているが、撮影機能やカメラ性能に関する機能向上は、ほぼ行われていない.
PowerShot V10のファームウエアアップデート
PowerShot V10 [Canon / Amazon] も、Version 1.1.0までの変更内容は、不具合修正とちょっとしたUIの変更や通信系サービスのアップデートに留まっていた.
そんな中、2024年春のPowerShot V10 Version 1.2.0のファームウエアアップデートには大いに驚かされた.それ以前の1.1.0までは、不具合対応+α程度の内容だったが、1.2.0は手振れ補正の性能向上という非常に大きな機能向上アップデートだったからだ.その内容は一言だけ「 手振れ補正の性能が向上しました。」とあるが、ファームアップして使ってみると、まるでカメラは別物となった.
私のV10の主な用途は記録である.静止画より動画の方が後々説明などをする場合に分かりやすい状況において、手持ちで短時間の4K動画を撮影する.また、全体の状況を記録する場合は、スタンドや三脚で固定しFHDで放置しておく.という運用だ.これらの使い勝手が今年提供された2回のファームアップでとても使いやすくなった.
Firmware Version 1.2.0
- 手振れ補正の性能が向上しました。
Version 1.1.0までのv10は、手持ちで記録する際に、自身が動かない場合でも[手ブレ補正:入]を、少しでも歩く場合は[手ブレ補正:強]にする必要があった.[手ブレ補正:強]は、撮影範囲が大きくクロップされ(画角から換算すると1.4倍程度)、せっかくの焦点距離19mm広角映像がスマホ程度の画角(26mm程度)となっていた.
手ブレ補正性能はVersion 1.2.0のファームアップにより大幅に向上した.カメラは1台なのでファームアップ前後の直接比較はできないが、体感では[手ブレ補正:弱]でも以前の”強”と同等程度の補正性能があると感じた.実際に1.2.0以降はそれまでの全ての手持ち撮影シチュエーションを[手ブレ補正:弱]で撮影する事が可能となった.
若干、厳しめの意見も書いておく.発売当初のPowerShot V10は、手ブレ補正性能が悪く、ユーザー評価がかなり低かった.価格が手頃でスタンドが内蔵されていることから、手頃な据え置きカメラとしての用途はアリだったが、様々な生活シーンを記録していくVlogカメラとしては評価されなかった.実際、Version 1.2.0のファームアップでは、手ブレ補正性能がようやく競合製品と同レベルまで追いついたに過ぎない.撮影範囲(クロップ)を変更せずにどのような仕組みで手ブレ補正性能を向上させたのかはわからないが、ファームウエアで対応できなるのなら、発売当初からこの性能を出す事はできたのではないかと考えてしまう.
Firmware Version 1.3.0
- 自動電源オフ温度設定メニューが追加され、「標準」「高」から選択できるようになりました
- [高]を設定すると撮影可能時間が延長されることがあります
- [標準]設定時より高温になる場合がありますのでご注意ください
- 動画撮影と静止画撮影の切り換えを容易にするGUIボタンを追加しました
- 画像送信および使用説明書/ソフトウェアURLメニューが変更になりました
Version 1.2.0までのv10は、4K動画の連続撮影時間が短く、長時間撮影する場合は4K撮影を避ける必要があった.[自動電源オフ温度設定]のメニューは、EOS R5などに搭載されている設定だが、この設定を変更することにでより長時間の撮影が可能になったとされている.カメラの動画撮影時間が決まる要因はいくつかあるが、カード容量やバッテリー容量などの制限以外に、カメラ本体が高温になった場合の安全性を考慮して撮影が停止される場合がある.[自動電源オフ温度設定]はCanon以外にも多くのカメラに搭載されている設定である.
カメラが高温になった場合の安全性には二つの考え方がある.一つは高温によるカメラ内部の損傷に対する安全性.そしてもう一つは人体に対する安全性である.それは電子機器の「低温やけど」に関する、国際的および国内の規制に関連している.低温やけどは、皮膚が比較的低い温度に長時間さらされることで発生し、たとへば50°C以上の熱源に1時間以上接触した場合に起こることが知られている.多くの規制では、消費者の安全を確保するために、「特定の温度以上に機器が加熱しないように設計されてる必要がある」とされている.主な規制にはIEC規格、PSE、CEマーキングなどで、いずれも人体に接触する可能性のある表面の温度を、48°Cから50°C以下に抑えることが推奨されている.
V10の使用説明書によると、「[自動電源オフ温度設定:高]に設定すると、カメラ本体やカードが高温になるため、低温やけどなどの原因になる可能性がある」と記載されている.また、手持ちで撮影することは避けて、三脚などを使用を推奨している.つまり、[自動電源オフ温度設定:標準]では、撮影可能時間は手持ち撮影の際の「低温やけど」が律速となる.もちろんカメラの温度があまりにも高温になれば、カメラ内部が高温に晒されることによる損傷が懸念される.[自動電源オフ温度設定:高]の場合は、カメラ本体の耐熱温度が律速となっていると考えられる.
振り返ってみると、CanonはEOS R5の発売当初にも、「8K撮影を売りにしているのにカメラ内部の温度上昇制限により撮影可能時間が極端に短い」という仕様で批判を受けていた.EOS R5は、その後Version 1.6.0のファームアップで[自動電源オフ温度:標準/高] に対応して、動画撮影時間の改善をしている.今回のV10でも同様の経緯となっているのが興味深い.
実際にファームアップ後にV10でどの程度撮影時間が長くなったかは検証できていないが、EOS R5の改善状況をみれば、V10の撮影可能時間にもかなりの期待が持てるのではないだろうか.今後は据え置き状態でも4Kを基準に使っていきたいと考えている.
優遇されている新ジャンルカメラ PowerShot V10
デジタル一眼レフカメラからミラーレスカメラにシフトして以来、撮影機能を始めとした様々な変化が訪れたが、ファームウエアアップデートによるカメラの機能向上も大きな特色の一つだ.PowerShotの新しいジャンルVシリーズの初号機V10は、PowerShotのカテゴリながらミラーレス1眼なみの機能向上ファームウエアアップデートが行われる優遇されているカメラである.
発売から1年以上となるこの低価格で小さなカメラも、ミラーレス一眼カメラ同様に、ファームアップによって再評価されても良いと考える.少なくとも私は、新しい性能を手に入れたと満足しているのだ.


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