[結論]:クリップオンストロボの配光分布には、様々な思想やドラマ(妄想含む)があり非常に興味深い
- Canon SPEEDLITE 600EX-RTは、クリップオン・直射時の撮影画面にキッチリ合わせた効率を重視した配光だった
- Profoto A1系は、ストレートのキセノン菅が発する光から、周囲にはラウンドチューブのような真円に近い等方的な配光分布を創り出すが中央付近に特徴的な少し複雑な配光形状を有する
- Godox V1は、ストレートのキセノン菅からナチュラルでなめらかな減衰をもつ楕円の美しいシンプルな配光を実現している
ストロボの配光分布を計る
Profotoは「ライトシェービングカンパニー」をうたっている.ProfotoのクリップオンストロボA1、現在は三代目のProfoto A10 [Profoto / Amazon]となっているが、ラウンドシェイプと呼ばれる発光部周辺の構造は、A1Xを含めて大きな変化はなさそうなので、基本的な配光特性は同様だと考えて良いだろう.A1のキャッチフレーズは「世界最小のスタジオライト」、説明文にはこう続く.
〜ユニークなラウンドヘッドは、やわらかくなだらかな減光部を生み、自然な美しい光を作ることができます〜
https://profoto.com/jp/products/lights/on-camera-flashes/profoto-a1
つまり、Profoto A1系は”配光が美しい”ということを全面的に押し出している.どういうことなのか?、何はともあれ見てみよう.


なるほど納得、600EXと比べると配光分布は全く異なる.Profoto A1の配光が”素晴らしく美しい”か?と言われると即答しにくいが、スタジオライトのような円形の照射形状で”やわらかくなだらかな減光部”は確かに実現されている.
ちなみに測定方法は以下の通り
- 壁(ベージュ)に向かってストロボを照射し撮影する
- ストロボの位置は壁から約1m、照射角は最広角側とする
- カメラは更に1m手前で壁からは約2mの距離、レンズは17mm
- それぞれ壁中央で露出系を使い光量を合わせる
- 露出は ISO100, F8, 1/200
- ストロボパワーは大体1/8付近が中心、機材によって多少異なる
- 中央部やや左手に、グレーカード付きホワイトボードを設置
- 撮影エリアに納まっている壁の幅は約4m
白色の綺麗な壁でなく申し訳ない.5m x 5mの白ホリがいつでも自由に使える環境に遠い目をして憧れてる.また各距離やストロボの向きなどは目視で大体合わせているだけなのでご了承いだだきたい.
さて、もう少し詳しく考察するために、撮影した画像をカラーコンター図に変換した.色分けされた等高線表示することで、光量の変化がより分かりやすくなる.さらにクリップオン・ストレートで使った場合の、画角24mm相当の撮影エリアを黒枠で書き足している.


黒枠は画角24mm相当の撮影エリア
Canon SPEEDLITE 600EXの配光分布と思想
キヤノンのストロボの配光分布は非常に分かりやすく設計されている。この分布は明らかにクリップオンで直射したときに必要な画像エリアにだけ照射する効率の良さを目指しているのだと想像できる.コンター図からは紫から赤・オレンジに向かって、なるべく画像エリア内で均一な光量を保つように四隅に向かってキッチリ光量を維持し、画像エリアから外れる黄色より外側では急激に光量が落ちていくという設計思想が読み取れる.(照射画設定は24mm)

600EX系のカスタムファンクションには、「画面サイズ対応自動ズーム」という項目があり、レンズ焦点距離情報に応じた照射角の変更に加えてセンサーサイズ(おそらくAPS-H, APS-C)の違いによる画角変化を考慮した照射角が設定できる.さらに、「配光特性」という項目では、自動設定される照射角の微調整(やや広め、やや狭め)が選択可能.これらのOptionが用意されていることを考えてみても、Canonの技術者は、直射時の配光特性に”ただならぬ思い入れ”があり、”クリップオンストロボの王道を守る”という事に力を入れていることが想像できる.
600EX-RTといえば、初めての無線ワイヤレス搭載機でもあった.つまりスペック的にはこの機種からは本格的にオフカメラストロボに力を入れていく、という宣言をしているわけだ.しかしCanonにとってストロボは、あくまでカメラのアクセサリーとして報道や記録のために効率よくエネルギーを使うための道具という位置づけなのだと感じる。
Profoto A1の配光分布と思想
Profotoは”スタジオライトの王道”をゆくメーカーだ.世界中で使われているラウンド形状のキセノン菅を使ったスタジオライトの延長として、ストレートタイプの小型キセノン菅を有するクリップオンストロボを作り上げた.このProfoto A1の配光分布には、生真面目なProfoto技術者の苦悩が読み取れるようにも感じる.(照射画設定はワイド端、画角の具体的な数値はない)

なるほど、周辺部分の配光分布は新円形に近い.中央から外側、オレンジから青にかけて等間隔の等高線が表示されている.600EXでは特に縦方向(上下方向)が画面外から急激に落ち込むのに対して、A1は縦方向横方向とも周辺に向かい円形の等方的な減光特性を実現している.ところがよく見ると黒枠の一回り内側の紫~オレンジにかけては3:2の撮影画面を想定したような特徴的な6角形の配光構造が存在する.中央水平方向の赤 ~ 黄色にかけて現れる横に尖った構造が徐々に円形に緩和していく様子が見て取れる.これはストレートのキセノン菅の配光を、楕円状ではなく真円に近い等方的な減衰プロファイルを作り出すための妥協案なのだろうか?あるいは、クリップオンストロボを作る限りは、クリップオン・ストレートで使用された場合にも”ある程度それにみあった配光”を確保しておくべきと考えたのだろうか?ストレートタイプのキセノン菅を使ったとは言え、Profotoの技術なら中央から等方的に減衰していく、それこそ”スタジオライトのようななだらかな”配光分布を作ることは可能だったのではないかと思う.そして、この配光分布に再び注目したきっかけは、第三のストロボの登場だった.
Profoto A1から2年弱を経て、Godox V1 [KPI / Amazon]が発売された.A1の特徴的なラウンドシェイプヘッドとマグネットによるアクセサリ脱着を”オマージュ”している.一時、訴訟問題もあったようだが現在も販売されているところを見ると落ち着いたのだろうか.何はともあれ配光分布を比べてみよう.


Godox V1の配光分布と思想
実はGodox V1の配光分布は美しい.レンズパターンが投影されたような構造も見えていないし最も均一でいて最もなだらかに減光していく.これはコンター図にしてみるとさらによくわかる.


Godox V1の配光は、赤〜青まで広範囲にかけてほぼ等間隔の等高線で表されている.すなわち、中央部から裾にに向かって綺麗な楕円状の光量分布が続いていることが分かる.一方、ワイド端28mm設定のため、クリップオン・ストレートの配光としては図中の黒枠(24mm相当)より一回り内側が画像照射域となるのだが、それを割り引いてみてもこの配光は明らかにそのことを全く考慮されていない.ここでもう一度Profoto A1のキャッチフレーズを引用する.
〜ユニークなラウンドヘッドは、やわらかくなだらかな減光部を生み、自然な美しい光を作ることができます〜
https://profoto.com/jp/products/lights/on-camera-flashes/profoto-a1
Godox V1ではこのような特性には特に触れていないのだが、A1のラウンドヘッドを”オマージュ”する際に、もちろんこの特徴を強く意識したに違いない.そして、その内容を文字通りに受け取り、ストレートのキセノン菅が発する光を、可能な限りなだらかに減光する設計とした.その結果、楕円型の配光とは言え、Profoto A1を上回るスムーズな周辺減光特性を実現している.ラウンドヘッドからは、Round形状の光が発せられるべきという事を忠実に追求したProfotoに対し、クリップオンとしての性質も形状的な特徴もあっさり捨て、ひたすらなだらかな減光を追求しているGodoxの配光にはシンプルな美しさがある.オリジナリティーという点では色々な意見があるだろうが、価格的な面を割り引いても、世界で最も数を売っていると思われるストロボメーカーの勢いを感じる特性だ.
この特性の違いは、ヘッド部の構造によるモノだ.キセノン菅やその背後にあるはずのリフレクターの構造は見ることはできないが、レンズを見るだけでも両者の思想の違いがよくわかる.Profoto A1は中央に設置されているストレートキセノン菅に合わせた大きめで非等方なレンズパターンを採用しているが、Godox V1では同心円状の細かいパターンが刻まれいるように見える.


ストロボの特性と思想
クリップオンストロボはもちろん基本的にはクリップオンで使用することを想定している.各ストロボのヘッド部にズーム機能があることからも使用しているレンズの焦点距離に合わせて、直射時に少ない発光パワーを効率よく使う事を目的としているからだ.正確なデータは見つけられなかったが、このクラスで使えるストレートタイプ・キセノン菅の種類はそれほど多くないらしい.CanonのSPEEDLITEは、少なくとも550EX時代から基本的なパワーは変わっていない(照射角35mm換算でG.N. 36クラス)し、Profoto、Godoxもこのクラスの発光パワーに大きな差はないように思われる.CanonのストロボではLi-ionバッテリーはEL-1の発売を待たねばならないが、それを除くとスペック上の違いは、発光モードの多彩さや防塵・防滴構造などに限られる.
Canonのストロボは、正面を向けて直射でしっかり効率よく使えることとバウンス時を含めたETTLの安定性、防塵・防滴などの信頼性を担保している点.かつ電波ワイヤレスでオフカメラ時の使い勝手も考慮し、カメラアクセサリとしてのトータル性能を追求している.Profoto A1はホームページを見ると、発光部を正面に向けず、やや角度を付けてフェザリング(のような)ライティングを推奨している.(とはいっても点光源であるので柔らかさは出ないが)Profotoはライトシェービングカンパニーとして多彩なアクセサリを用意している.ストロボが主体でアクセサリを使いこなすことで様々な表現を提案してる.Godoxのストロボその物には正直なところ思想的な部分を強く感じることはない.今回v860の測定もしているが、こちらは配光特性をふくめて極めて600EXなどと近い.しかし、あらゆるストロボの良いところを取り入れ、いち早くラインナップを拡充していくところには、選択肢(価格を含めた)を広げ、模倣の果ての進化を目指すというような思想を感じる事ができる.
今回は、それぞれのストロボのデフォルトの配光のみを取り上げたが、いくつかのアタッチメントやアクセサリーを使用した場合の配光特性や、色温度などに関して今後も取り上げていきたい.
Appendix
- 典型的なスタジオライトではないが、ラウンドタイプのキセノン菅を持つストロボのデータとしてGodox AD300Proの例を載せておく



- Contour画像生成など、画像解析には “ImageJ” https://imagej.nih.gov/ij/を使わせて頂いている.


クリップオンストロボの配光分布をコントロールする(アダプター編) – Photographer George NAKA への返信 コメントをキャンセル